生殖医療は、日々めざましい進歩によって妊娠・出産の可能性を高めています。
しかし、一方で、多様な選択肢による迷いや悩みは尽きません。金銭的・身体的負担、そして心の傷や疲労などの精神的負担は治療の継続を妨げ、さらにゴールが見えない治療であることがますます治療を先延ばしにし、妊娠のチャンスを逃してしまう一因ではないかと思われます。
そもそも「人間の命は授かりもの」であるという医学的な原点から、どんなに先端技術を駆使しても、命は操れるものではありません。治療背景には、「結婚したら子どもができるもの」と考える人たちに理解してもらえないため、時に不妊女性への圧力となり、孤独に陥りやすくなります。さらに生殖能力は、身体能力の基本であることから、うまく機能していないことによって自分自身について疑問を抱くようになります。
女性は「産む性」であることが明白である以上、「産めない」という事実は自分の身体に裏切られたような思いを募らせます。このように不妊は不名誉な烙印として捉えられるため、「結婚=妊娠」というライフステージにある当事者にとっては、ネガティブな経験として意味づけられたままその後の人生に影響してしまうのではないかと思うのです。
以上6項目について明らかにしていきたいと考えております。
なぜなら、不妊に対する偏見や、生活のなかでの支障を知ること、そして考えることは、「言えない/見えない」当事者に対して何らかの理解の始まりだと思うからです。まずは当事者の声を聴くことで、本当にそのような支援が必要とされているのかという原点に戻り、当事者の現在と未来を支えるQOLを考えた支援や治療環境を改めて見直す必要があるのではないかと考えています。そのためには「全人的医療」のアプローチ、つまり当事者のカラダとこころ全体を理解するサポートを具体的に現実化していくことが求められます。みなさまにもこの活動にご参加いただきますよう、よろしくお願いいたします。