不妊とは何か

1.不妊と不妊症は違う?

そもそも不妊とは、のみぞ知る領域の問題だと考えられてきました。
つまりそれは、不妊治療(方法)によって「治す=子どもをもつこと」(結果)を目的とした医療行為であることを示しています。それによって、不妊治療を受けたそのときから「不妊症」という診断と、「不妊当事者」から「不妊患者」という立場になります。
しかし、不妊は治療によって結果的に子どもが授かっても、治療をやめて患者ではなくなっても、当事者にとって「不妊」は終わらないのです。
つまり、「不妊とは何か」という問いに対しては、

不妊 医療化された「不妊症」・「社会的不妊」

医療化された「不妊症」という視点と「社会的不妊」という視点から構成されたものだと考えています。
社会的不妊とは、現代の社会の規範や文化、そして現代人の多様な生きかたにまつわる問題であり、当事者または社会の観点変更や、インフラなどの整備(方法)によって不妊環境を変える(結果)ことを必要不可欠としています。

【参考文献】

白井千晶「『不妊』とは何か―不妊当事者調査の因子分析にみる『不妊』構成次元―」
大妻女子大学人間関係学部紀要、人間関係学研究、第10巻、2008年度

2.不妊症の定義

不妊症とは、婚姻関係にある男女が妊娠を希望し、避妊することなく2年間性行為を試みても妊娠に至れない状態を指します。

現状 子供を持たない=出産の先送り

婚姻後1年で80%、2年で90%のカップルが妊娠する現状から、不妊期間が2年と定められています。この定義から単純に計算すると、10%は不妊となるわけです。

しかし、「社会的不妊」によって単純に計算できない理由もあります。
近年晩婚化の傾向があること、そのうえ結婚してもすぐに「子どもを持たない⇔出産の先送り」という結婚や出産のライフイベントの年齢規範が柔軟化されている現状にあります。

3.不妊症の原因

WHO(世界保健機構)調査データ

WHO(世界保健機構)によると、不妊の原因は、男性のみ24%、女性のみ41%、男女共24%、原因不明11%と報告されています。

価値観の多様化する現代社会においては、現代人は自分らしく生きることが可能になり、自由な選択肢はたくさん用意されています。
しかし、その自由さは責任を生じさせるため、生きづらさや苦悩を生み出すのです。そのひとつが「不妊」なのです。
条件が整ってから妊娠したいという気持ち、今は仕事を優先したいという気持ち、夫婦だけの生活をしばらくは楽しみたいなど、さまざまな思いはあります。
私もそういった考えを数年前まで持っていました。しかし、残念なことにカラダは待ってはくれませんでした。女性の臓器で加齢現象が最も早く顕れるのは卵巣なのです。

しかし、不妊は女性だけの悩みではありません。男性不妊は不妊カップルの半数を占め、その半数は妻の要因も含めるという現状です。男性不妊の90%は精子をつくる機能に障害があり、精巣でうまく精子をつくることができない「造精機能障害」だと言われています。
指摘される原因は、ストレスがあげられていますが、高純度な排卵誘発剤などの開発や女性不妊の治療法が向上するなかで、男性不妊が目立ってきているということも考えられます。

故に、私が実感したことは、子どもがほしいと願う私たちは、結婚すればいつでも子どもはできるという認識を変えていかなくてはならないのです。またその周りの人たちにも、それを理解してほしいと願うのです。

4.不妊症の特徴

1.基本的な検査から、原因がどこにあるか追求する。
たとえば、子宮内膜症などの器質的病変があれば、その治療から始まります。
基礎病変を治療→除去したあと、不妊治療が始まります。
2.段階的な治療をする。
患者は身体的/経済的にも負担の少ない治療から開始されます。
妊娠にいたらない場合は、一般的に次の負担の大きい治療へと治療方針を変更(ステップアップ)されます。
3.カウンセリングが必要?
夫婦どちらかに原因があっても夫婦が理解/協力しなければ、不妊を克服できません。
心理的ストレスから患者を自由にするために、どの段階の治療においてもカウンセリングはときには必要だと考えます。

不妊のカウンセリング体制を確立するための研究を行っております。アンケートへのご協力を心よりお願いいたしております。

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