カウンセリング

カウンセリングとは何か?

カウンセリングとは何か?

カウンセリングとは、クライエントのもつ資源を最大限に活用する援助です。
つまり、クライエントがさまざまな人生の問題に直面し、苦しみ悩むときに同行者としてそのプロセスをともに歩んでいくことです。
なぜなら、ひとは話を聴いてもらっているうちに、自然に自分自身の心の内面を見つめているからです。それが自分と向き合うことだと私は思います。
ですから、カウンセラーに自分自身の問い(悩み)を話しながら、その問いにどう答えるかは、カウンセラーではなく自分自身なのです。
カウンセリングとは、その気づきをもたらすプロセスでもあるのです。

どういうときに(不妊)カウンセリングを受けるのか?

不妊カップルは治療をする・しないに関わらず、その悩みや不安は尽きません。言葉は悪いようですが、わかりやすくいえば、「不妊はギャンブル」のようなものだからです。どうなるかわからないという不確実性、今度こそはと期待し、裏切られるという「乗ったら降りられないエレベーター」のような感情に悩まされるのです。そして、結婚すれば子どもができて当然と思われている家族や友達にはなかなか理解されないというジレンマもあり、「言えない」ということが一番辛いのだと私は思っています。
そんなときにじっくり話を聴いてもらえると、背負った荷物を降ろせるような実感があるのではないでしょうか。

(1)不妊かな?これからの治療をどうするか?と悩んだとき (2)治療がうまくいくかどうかわからない (3)治療がうまくいかないのは自分(相手)のせい? (4)不妊によって家族(親)との関係、パートナーとの関係がうまくいかない (5)医師との関係があまりよくない (6)職場では言えない (7)仕事との両立 (8)経済的な問題 (9)セックスの問題 (10)治療が怖い (11)ひきこもりがちになった (12)治療のステップアップが不安である (13)治療をやめる決心がつかない

(不妊)カウンセリングはなぜ必要?

「不妊」とは、状態そのものが、すでに当事者たちの人生において経験するこころの傷のひとつです。
さらに治療を始め、周期ごとに妊娠に至らず、その繰り返しによりさらにその傷は増えていくばかりです。

生殖補助医療技術(ART)の不成功 = 「授かるはずだった、これから出会うはずの子ども」を失う体験

どのようなストレスを感じているかを
専門的な心理的援助を通して認識・対処していくことが必要と考えます。

不妊カップルは、生殖補助医療技術が不妊治療の最終手段として認識しているため、それを精神的・時間的・経済的に許せる限り治療から降りることができません。それは、親になること、子どものいる幸せな家庭、妻として嫁としての存在価値、治療にかける時間や費用、仕事などすべてを失い、さらに、子どもを産める身体であるという確信をもつために、「今」を今度こそと治療に全力投球し続けるのです。

皮肉にも医学の進歩は目覚ましく、最新の生殖補助医療技術を追求するばかりにその強迫観念から、不妊カップルは今とその将来をかけて、願いが成就しないかもしれない長いときを「不妊」のなかで過ごすことになるのです。
問題は、生殖補助医療技術における妊娠率などのエビデンスにとらわれすぎて、不妊カップルのQuality of lifeに重要なメンタルケアの対応が立ち遅れている現状です。そこで、適切なサポートを行うために、どのようなストレスを感じているのかということを専門的な心理的援助を通じて認識・対処していくことの必要性があると私は考えています。

カウンセリングは本当に必要?

しかし、本当にカウンセリングが必要かどうか、どんなことを悩んでいるのか、どのようなカウンセリングのしくみがあれば役にたつのか・・・という議論は、みなさまの声を参考にさせていただこうと思っています。
確かに正しい情報や治療の見通しを提供する、精神的サポート、カップルの治療への自己決定を促すなど、すでに不妊カウンセラーの定義はありますが、実際にどうなの?
本当に必要としている?誰に相談したい?
という問いが私にはあるのです。

いま参考にしたいカウンセリングの内容や方法は以下の通りです。関心のあるかたは読んでいただければ幸いです。

不妊カウンセリングに関わる人たちに

生殖遺伝カウンセリング(遺伝専門医|遺伝専門医|遺伝専門医)・生殖心理カウンセリング(グループカウンセリング|不妊学級/ビアカウンセリング|個別カウンセリング|不妊相談/心理カウンセリング)

不妊カウンセリングにはこのような資格をもった人たちや支援してくださる団体が関わっています。

わが国における生殖・不妊にかかわるカウンセラーの資格

  生殖・不妊心理
カウンセラー
不妊カウンセラー
体外受精コ-ディネ-タ-
Fineピア・カウンセラー 認定看護師
制度の創立 2005年 2002年 2005年 2002年
有資格者数 10名(予定) 786名(不妊カウンセラー、体外受精コーディネーターの合計、2005年10月現在) 約10名(予定) 40名(2005年現在)
対象 臨床心理士を中心とした精神保健専門家 医療関係者(医師、看護職、エンブリオロジストなど)、不妊患者、その他 不妊体験者 実務経験のある保健師、助産師、看護師
認定団体 日本生殖医療心理カウンセリング学会 日本不妊カウンセリング学会 NPO法人Fine(現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会) (社)日本看護協会
養成 学会主催の養成講座(90時間)
内容:
生殖医学の基礎、生殖・不妊に関わる心理学的理論、不妊体験者に対するカウンセリングの実際的問題
学会主催の養成講座(年2回、1回約10.5時間)、学術集会への参加
内容:
生殖医療、患者中心ケア、情報提供による意思決定の援助が中心
会主催の養成講座(90時間)
内容:
生殖医学の基礎、カウンセリング理論の基礎、不妊の心理的問題、ピア・カウンセリング実習
6ヶ月の研修(645時間)
内容:
不妊の基礎、不妊看護援助とマネージメント、演習、施設実習
認定方法 養成講座修了者に
認定試験
養成講座を3回以上受講の後試験 養成講座修了者に
認定試験
教育課程修了後
認定審査
特色
  • 精神保健専門家を対象とした欧米の基準に相当する内容
  • 世界でも類を見ない系統的なカリキュラムによる養成
  • 生殖医療に関する正しい知識を提供し、患者の治療に関する意思決定を援助しようとする
  • 門戸を広くし、幅広い職種の者が履修できる
  • 不妊体験者という同じ立場で話を聴くための訓練に特化
  • 養成には専門家が関わる
  • 治療施設において不妊看護の専門的ケアを行い、他の看護職に対する相談・指導を担う能力を育成する
問題点
  • 人数が少ない
  • 心理援助の専門性に限界
  • 活動の位置づけがはっきりしない
  • 取得が困難
  • 看護の専門家であり、
    心理の専門家ではない

不妊の心理

不妊状態の当事者たちは、いつも同じ心理状態ではありません。
生殖医療の段階によっても異なり、段階ごとのサポートが必要だと考えます。

第1期 想像期
この時期は自分が不妊であることを知らない時期であり、子どもの有無は自分で決められると信じています。この時期はカウンセリングの必要はありません。
第2期 混乱期
「想像期」にいた人が不妊によるストレスが強い状態である「混乱期」に移行するのは、「身近な人の妊娠・出産」「周囲からの外圧」「医療機関に受診する」という状態や行動によります。しかし、本人は不妊だとは認めたくない否認の時期でもあり、そのために医療に没頭し、かえって焦りを強くする特徴がみられます。そのためにうつ状態を引き起こしたり、対人関係の回避や感情の起伏が激しくなるのもこの時期です。
第3期 統制期
この時期に入ると、当事者は少しずつ安定に向かいます。「対人関係の修復・開発」や自分が不妊であることを第三者に話すことができるようになります。また、生殖医療を利用するだけではなく、生きかたの問題として考え始めるようになります。さらに特徴的なのは、同じ体験をした人とコミュニケーションをとるようになったり、不妊治療以外のことに関心をもっていくなど、喪失していた自分の身体の信頼感を取り戻すことができる傾向が見受けられます。
第4期 和解期
不妊体験を自分の人生に統合することができる時期になります。「不妊」と向きあってきた自分を受容し、その後の人生を、医療からの解放と不妊を生かすという変容に特徴が見られます。これまでがんばってきた身体に対する愛着や、パートナーとの絆やその後の生きかたを発見することなど、社会的にも自己回復していくようになります。
そのためには、不妊経験に意味を見出すことが必要なのです。

カウンセリングの方法

意味づけカウンセリング 意思決定カウンセリング
当事者の主体的な意思決定は、不妊治療において最も重要なプロセスです。そのためにカウンセラーは当事者が、医師から得られた情報を正しく理解し、不妊治療が本人または家族に与える影響や子どもをもつ意味について考えていくことの援助を行います。つまり、「どうすれば妊娠できるか」ということを医学的価値よりも、その人にとっての意味を大切に考えるために、当事者の感情や価値観、社会的役割などをもった存在全体として尊重し、人生全体を俯瞰しながら共に治療選択を考えていく支援を行います。
支持的カウンセリング
不妊であること、または不妊治療においてはさまざまな苦痛を伴います。そこで支持的カウンセリングでは、当事者が子どもを授からないことや、周囲や家族からのプレッシャー、不妊治療における妊娠率の低さなどの苦痛に対処する方法を見出す援助をおこないます。そして、治療中のストレスマネジメント指導など、ストレスフルな状況に自分なりに対処できるようになることを目標とします。
治療的カウンセリング
専門的な心理療法を用いるカウンセリングを指します。対象は、個人、夫婦、家族、グループなどさまざまです。

今後の課題/不妊カウンセリングの役割分担とチーム医療

不妊カウンセリングには、生命倫理に関連した複雑な問題が多いため、カウンセラーの関わりだけでなく、チーム医療体制のなかでその役割を分担し、科学的/合理的根拠に基づく(EBM)と患者主体の医療である(NBM)の双方からの視点で支援する必要性があります。医療体制の詳細につきましては、今後の研究で検証していきます。
みなさまの声を中心に進めてまいりたいと考えておりますので、アンケートにご協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。

生殖医療―カウンセリング―法律・社会福祉―サポートチーム

【参考/引用文献】

※1
久保春海「不妊カウンセリング」産婦人科治療、95巻2号、2007年
久保春海「ARTにおけるカウンセリングの重要性」臨婦産、60巻1号、2006年
※2
平山史朗「生殖医療におけるカウンセラーの認定制度」産婦人科治療、91巻6号、2005年
森崇英・久保春海・高橋克彦『コメディカル ARTマニュアル』永井書店、2006年

―――平山史朗「生殖心理カウンセラーの認定制度」 ※2
―――矢野ゆき「個人開業カウンセラーによる生殖心理カウンセリング」 ※3
―――平山史朗「生殖心理カウンセラーの役割と資格」 ※4

※3
矢野ゆき「『不妊』の受容過程の段階とその特徴―心理的援助のための考察―」
愛知淑徳大学大学院コミュニケーション研究科 1999年度修士論文、2000年

不妊のカウンセリング体制を確立するための研究を行っております。アンケートへのご協力を心よりお願いいたしております。

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